ジャガ級河川装甲艦

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Jaga Class River Ironclad


【概要】
民主連邦海軍が保有する河川・沿岸用の小型船舶である。
「装甲艦」という古めかしい名前の通り、船体がある程度装甲化された平底の軍艦である。しかも衝角つき。
100年ほど前に遡った見た目だが、熱帯雨林に河川が多い同国では役立つことが多く、重宝されている。
強力な火力を持つため、川の戦車的な扱いであり、歩兵部隊の支援にも用いられる。
ただし貧弱な航行能力のため、外洋に出ることができず、たびたび高波に浚われる可哀そうな船でもある。


【開発経緯】
民主連邦は豊穣の地であった。
その源泉は、国土の至る処に河川が巡り、複雑な海岸線を形成していたことに起因していた。
張り巡らされた河川は人々の生活水準を向上させ、入り組んだ海岸線は多様な文化をもたらした。

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〈民主連邦の国土。長大な半島には大河川に国際運河が多く点在している。〉

しかしこの独特な地勢は国土と権益を守護せんとする海軍にとって、常に悩みの種であった。
沿岸警備は困難、一度上陸を許すと、河川に沿って内陸深く侵攻されることが想定された。
常時の警備や臨検も大変な業務であり、官憲の目が行き届かない地域が常に存在したのである。

それに対して、従来海軍は有効な手立てをとることができなかった。
威厳たっぷりに振舞おうとする海軍上層部は、外洋艦隊こそが最重要であるという観念を持っており、常にブルーウォーターネイビーを志向していたからである。
貴重な予算の多くは派手な計画に散在され、下地を支える沿岸警備や河川警備はあまり重視されなかった。
海軍の構造は、ニーズとは乖離した歪な形状となっていたのである。

そんな状況下でもオト―級警戒発動艇など、沿岸に適した小型船を一応それなりの数揃えていた。
しかし、オト―級の火力や耐久性は低いに、それすら配備できない最末端の基地すら存在した。
最も下に位置する基地は、粗末なバラック小屋に壊れかけの無線機と小銃が置いてあり、腐りかけの艀には中古の木製手漕ぎボートが係留してあったという。
こういった僻地の最貧基地は主に懲罰や左遷目的の人事で使用された。

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〈末端基地の様子。多くは外界から隔離されており、やる気のない兵士が詰めていた。〉

こういった粗末な状況の変化は、主に外圧からもたらされた。
国際運河や重要航路の安全を保障しなければならなかったのである。
国富の多くを貿易によって生み出している民主連邦にとって、それは死活問題となった。
海軍は夢見心地の大艦隊主義から、現実的な路線の修正へと、渋々ながらも進むこととなる。

以上から、銀星重工造船部に向けて河川・沿岸用の小型砲艦の要求が出されたのであった。
要求仕様書はいつものごとく、総花的なものであった。
主な条件は、以下の通りである。

1.水深が浅い河川でも航行できるよう、平底とすること。
2.広角に志向できるよう砲塔搭載とすること。また砲とは別途機銃も装備すること。
3.耐久力を高めるために船体を装甲化すること。
4.敵船舶に対し甚大な脅威・損害を与えるため、衝角を備えること。

特筆すべきは4である。衝角というあまりにも前時代的武器が指定されていた。
これは臨検や不審船の対応として、ぶつけて沈めればということが想定されたためである。
最ものちに完成して判明するが、むしろ味方や無関係の船を沈めることが圧倒的に多かった。
銀星重工造船部は以上の主要条件を、大手軍需企業としてそつなくこなし、試作1号艇は仕様書提出から早くも7か月後に完成したのであった。

試作艇は要求より航行能力と速度が劣っていたものの、海軍側は大変好意的に受け取った。
性能自体は凡庸であったが、銀星重工は現状を鑑みて設計にひと工夫を加えていたのである。
プラットフォーム化である。主要武装を状況に応じて変化をつけて搭載することができた。
そのため多様な任務に耐えることができたのが大きな売りであった。
海軍は早速量産を指示、短期間で民主連邦中に普及したのである。
量産1番艦は民主連邦の州名をとり「ジャガ級」と命名された。


【性能】
まず目を引くのは船体後部に載せられた大型の回転砲塔である。
これは陸軍が保有するリクトル重装甲車の砲塔をそのまま流用したものであり、銀星重工特有の計算高い生産省略化の賜物であった。
ただし武装は強化されており、75mm短身砲が装備されていた。
同砲は徹甲弾や榴弾を撃ちこむことができ、後々重宝されることになる。
更に13mm機関砲も剥き出しで積んだため、本艦は今までとは比較にならないほど強力な火力を有していた。

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〈後部砲塔。射程距離は短いものの、十分な支援火力を持っていた。〉

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〈船室後部は砲弾が所狭しと並べられている。〉

しかし大分無理して砲塔を積んだため、安定性は極めて不安なものであった。
船体に比例して砲塔や砲弾が重いため、重心は常に後ろ側に寄っていた。
後に前部衝角の強化や、荷物を全体的に前に積むなどの泥縄的施策がとられたのである。

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〈バランスをとるため、荷物室は船室前部に設けられた。弾薬の他食糧や燃料が積み込まれた。〉

もう一点の不安要素は搭載する機関の出力がかなり貧弱であったことである。
量産性を重視した銀星重工は、民間船舶用に卸している焼玉エンジンをそのまま搭載した。
焼玉エンジンは燃料の自由が効き、構造が簡易であったこと、そして船乗り出身の水兵達にとって馴染みの代物であり、扱いやすかったことは大きなメリットであったが、何分パワーが出なかった。
全力を出しても10ノット以下の速度であり、容易に振り切られた。

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〈船室中央部には焼玉エンジンが剥き出しで搭載されている。暑くて仕方なかった。〉

以上の理由から航行能力が極めて弱く、前述したとおり頻繁に高波に浚われ喪失した。
また平底であり安定性が低く状況によっては大変に揺れたので、船酔いは日常茶飯事だった。
民主連邦パインドネシア州沖合において勃発した地震では、ある河を津波が遡上したことにより、当該地域の本艦が全滅したという事件は、海軍の間では記憶に新しい。
しかし波の穏やかな河川や沿岸地域ではさして問題ではなかったので、将兵の多くは歓迎したのである。

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〈横から見たジャガ級河川装甲艦。臨検や警備のためにしばし陸戦隊員が同乗した。〉

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〈操舵室もある程度装甲化されており、ハッチから敵に銃撃を加えることができる。〉


【運用】
本艦は沿岸・河川の警備、臨検、連絡や輸送とありとあらゆる雑務に使用された。
海軍にしては珍しく現実を踏まえた兵器であったため、多くの基地に配備され任務に就いた。
事実ジャガ級が配備された後、密輸や海賊行為の検挙率は大幅に改善される。

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〈臨検する河川装甲艦。民主連邦では河川交通は未だ盛んであった。〉

戦時においても河川装甲艦は頻繁に用いられた。
特に陸上インフラが低く、河川交通を補給線とする場合において大いに重宝された。
警備だけではなく、海軍陸戦隊員と共に川や沿岸を航行し、しばし敵基地を攻撃した。
良好な火力と装甲は、まさしく水上戦車と言うべきものであった。
少数部隊で神出鬼没に奇襲をしてくる本艦を、敵兵は大いに恐れたという。

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〈陸戦隊員と共に河を遡る装甲艦。歩兵部隊の進撃と合わせることができた。〉

しかしいかんせんスピードが出ないことから、滅多打ちに合い座礁・転覆することも多かった。
本艦は大量に生産されたが、少なくない数が撃沈破されている。
装甲化されてるとはいえ、当たり所が悪ければ普通に穴が開いた。特に甲板が脆かったという。
その活躍は多くの水兵の亡骸と共にあったわけである。

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〈停泊し物資の積み込み中のジャガ級。水兵にとって貴重な休息時間である。〉




【開発後記】
河川装甲艦というロマンあふれる作品です。
直接的なモデルは特にないですが、19世紀末に思いをはせつつ作ってみました。
完成してから、旧陸軍のAB艇に似てるかなぁとも気づいたり。
こういう船があると、架空国家のリアリティがぐっと上がりますね













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プロフィール

けーにっひ

Author:けーにっひ
駄作兵器と失敗兵器と旧兵器が大好きな人。
ロマン溢れる歪んだ兵器をレゴで作るのが趣味。
コメントいただけると嬉しいです。
どうかよしなに。

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